競輪選手をクビになった50歳男性。引退した元選手たちの「その後の人生」を聞いてみた

競輪選手をクビになった50歳男性。引退した元選手たちの「その後の人生」を聞いてみた

競輪選手をクビになった50歳男性。「その後の人生」

競輪選手の世界は厳しいもので、クビの対象となった選手の下位30人ずつが、半年毎にクビ(代謝)となっていく。高知に所属していた大﨑世志人さんも、この制度により今年の1月に競輪界を去った一人だ。50歳にして無職となった彼の行く末は? また、引退した競輪選手のセカンドライフの実情についても聞いてみた。

終盤で地元を走れなかったことも痛手に…

大﨑さんは、以前にもクビになってしまうピンチが訪れたのだが、当時は「何とかなるだろう」と楽観視。実際その後に点数を重ね危機回避に成功。しかし、今回はその時とは全く状況が異なっていたと話した。

――引退の前兆アクションが見え始めたのはいつ頃からですか?

大﨑:クビの対象となる少し前から「今回はマズいかな~」と感じ始めてました。結構ギリギリの勝負をしている時に新型コロナウイルスに感染して、走れない期間もあって……。

しかも、去年は1月から6月まで地元の高知の斡旋が一切ありませんでした。さらに7月からは改修工事に入って開催自体がなくなったんですよ。

結局、気がつくと去年は一度も地元で走れなかった。やっぱり地元だと気合いも入るし相性も良かったので、点数を稼がなくてはいけない大事な時期に地元を走れなかったのは痛かったです。

――斡旋希望とかは出せないんですか?

大﨑:一応出せますよ。ただ僕の場合、いずれ斡旋は来るだろうと思っていたから特に出してなかったんですよ。今にして思えば出しておけばよかったですね。大抵、ラストランは地元地区を希望する人が多いんですけど、特に何も言ってなかったので最後は別府になりました。

引退した気持ちでいたら、最後の最後に松山の補充が入って1日だけ走って、僕の競輪人生は幕を閉じました。

競輪選手が引退した時にもらえるお金は

――ちなみに競輪選手は引退時に退職金的なものは貰えるんですか?

大﨑:退職金と選手年金があります。2つ合わせて現役時代の総出走回数をベースに計算されるんですが、今回、僕と一緒に引退した2年違いの後輩は僕よりも退職金をもらってましたよ(笑)。

僕、落車が多くて大怪我して休んでる期間が結構あったので。

 ただ、今はその制度がなくなったので、若い選手は引退しても貰えないみたいです。その代わり、一走一走の賞金から退職金や年金用に引かれるお金がないぶん、僕と全く同じ成績でも手元に残る賞金が多い。

だから若い選手にはよく言ってますよ、「派手に使ってもいいけど、貯金もしておけよ」って。

職安通いにマッサージ師、さらには政治家も!

年齢無関係で競走得点が低いと問答無用でクビになるサバイバルな「代謝制度」。毎回誰かが引退しているわけだが、その人たちが第二の人生として選ぶ職業にはどのようなものが多いのか。また、歳を重ねてからの引退でも再就職先は見つかるのだろうか?

――競輪選手が引退した後はどんな仕事に就くことが多いんですか?

大﨑:引退した時の年齢によっても違うんですが、30代の選手だったら普通に職安に行く人もいます。その歳ならまだ仕事もあるんで。

逆に歳がいってからの引退だと再就職先が見つかりにくいから、競輪開催時の検車員や従事員、それと競輪場の警備員をする人が多いです。あとはトラックやバスの運転手、自転車屋さん、実家が商売しててその家業を継ぐ人、退職金で飲食店を始める人とかですかね。

僕の兄弟子も引退後にお好み焼屋をやってます。

でも、選手時代にお金を貯めてアパートやマンション経営を始めていたりする選手もいるので、必ずしも引退した後の選手が就職先を探して働き始めるというわけでもないですね。

――意外な職業に就いた人はいますか?

大﨑:マッサージ師になる人もいますね。鍼灸の学校に通って免許を取って開業する人とか。現役時代から身体をケアするためにマッサージには通っているので、お客の気持ちもよく分かっているし。ちなみに、現役の選手で兼業としてマッサージ師をやっている人もいますよ。

――兼業で別の仕事をしている選手も多いんですか?

大﨑:わりといますよ。タクシードライバーや俳優、プロレスラーをやりながら走っている選手なんてのも。あと、意外なのが政治家。今だと沖縄の屋良選手が村議会議員をやっています。練習もしなくてはいけないので、かなり忙しいみたいです。

50歳で娘にパソコンの使い方を教わる日々

選手を引退した後の第二の人生はさまざまあれど、やはり働き慣れた場所、人間関係が出来上がっている競輪場での仕事に就く人が多い。大﨑さんも高知競輪場の警備員という選択肢があったものの、彼はその道を選ばず新たな挑戦に向けて動き出したのである。

――それでは大﨑さんは今後どのような仕事をするんですか?

大﨑:元選手の先輩で西村正彦さんという人がいるんですが、その人が会社を作ったんですよ。高知競輪のYouTubeチャンネルを配信などを行っている会社なんですが、今度、高知でGⅠが開催されるので人手が足りないから手伝いに来ないかと誘われまして。

その時点で考えていた他の仕事が「高知競輪の警備」か「JKAの従事員」。

でも従事員は、タイミング的に今は新しい人は雇えないと。それで警備の仕事についても検討したんですが、全く違う面白そうなこと、新しいことにチャレンジしたいなと思いました。

それで西村さんのお誘いを受けて、パソコンを買って娘に使い方を教わりつつ、YouTube配信のスタッフをやっています。

クビになった選手目線で見る「競輪」とは

約28年間の現役時代には、ほとんど触ったことがないパソコンに悪戦苦闘しながらも、今後の競輪界をさらに盛り上げるべく新たな立ち位置で奮闘しながら充実した日々を送っている大﨑氏。そんな彼に「競輪の魅力」について聞いてみた。

――ズバリ、競輪の魅力とは何でしょうか?

大﨑:他の公営レースにはない一番の魅力は「人が走っている」ということでしょうね。

そして、その選手たち全員にドラマ、バックボーンがある点。

そして、みんな命を懸けて走っている。そこまでの覚悟を持って選手は走っているっていうところですかね。

あと、競輪だけなんですよね、走る前にレースについてのコメントを言ってるのって。もちろん、あれが全てではないけど、そこをファンはどう読み取るか。たしかにとっつきにくい部分はあると思いますが、知れば知るほど着実に面白くなっていく、それが競輪の魅力だと思います。

新たな挑戦をするのに年齢は関係ない!

 人間、何歳になっても新たなことに挑戦をしている姿は見ていて非常に気持ちが良い。今回、YouTube配信の話をしている時の大崎氏がまさにそれで、これから面白いことをやってくれる気配がビシビシと伝わってきた。

 なお、大﨑さんがスタッフとして配信を行っている高知競輪ちゃんねるは、高知競輪場に行けば生放送を観覧することができる。2月23日からは、改修工事が終了した高知競輪場での初のビッグレース「全日本選抜競輪」の配信が予定されている。競輪界のスターたちの走りに注目だ。

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