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女子ケイリン・ネーションズカップ優勝の佐藤水菜(24歳)の野望は世界女王を倒しての金メダル「2024年まで気を休める暇なんて1ミリもない!」

ガールズケイリンでは昨年27戦25勝と圧巻の強さを見せ、自転車競技では日本代表として世界の強者たちと対峙する佐藤水菜。2年連続で世界選手権で銀メダルを獲得している彼女にとって、今も忘れられないレースがある。
2021年世界選手権女子ケイリン決勝。
2024年パリオリンピックへ向け新たな船出となったこの大会で、佐藤は日本人史上初の女子ケイリン決勝進出の快挙を成し遂げる。しかも初出場で、女子短距離種目では初となる銀メダル獲得だ。佐藤にとってはもちろん、日本代表にとっても大きな一歩となった。
ただ、先につながると分かっていたからこそ、このメダルの意味を痛いほど感じていたのが佐藤だ。3年後に控える大舞台――。「うれしい」よりも「悔しい」気持ちが上回った。世界のトップ選手と自分との小さくはない距離を感じたからだ。

この種目で優勝したのは、ドイツの現・世界女王だった。
「前に(リー ソフィー・)フリードリッヒがいたのですが、私は3周とも彼女につきっぱなしで。しかも最後さすことができなかった。普通に考えたら、先行する選手の脚がいっぱいになって番手にさされるという展開が多いんですけど、あの時はむしろフリードリッヒに引き離されるような感じさえありました。まったく歯が立ちませんでしたね」
佐藤の自己分析「追われるより追うのが好き」
口をついて出るのは反省の言葉ばかりだ。しかし、この敗戦を機に、佐藤の練習に対する意識は大きく変化したという。
「一番きついと言われる750mシッティング(サドルに座って漕ぐ)全開の練習もまったく苦じゃなくなりましたね。男子選手と走るときも、“この選手に勝たないと彼女には勝てない”いうくらいの気持ちを持って練習するようになりました」
自己分析によれば、「追われるより追うのが好き」。目の前により大きな存在や倒したい相手がいるほうが断然燃えるタイプだ。
振り返ると2020年夏にパリオリンピックに向けたナショナルチームに入った当初から、佐藤は必死に周りを追い続けてきた。
「梅川(風子)選手と同時期に代表入りしたのですが、同じスターラインにいたはずなのに、梅川選手はいつのまにか自分の遥か上にいて。追いつくのに必死だったし、その後もいつも上には上がいるというプレッシャーもありました。とにかく国際大会に出るまでは不安で。強豪国が不参加の大会で表彰台に立てなかったときも焦りましたし、その後は世界選手権のメンバーに選ばれなければ……というプレッシャーを感じました。自分がどこまで世界で通用するのか分からなかったので、初めての国際大会のレースを走り切るまではプレッシャーや緊張感は相当のものでしたね」
“楽しんで張り合ってくれる”梅川の存在
よき練習仲間であり、最大のライバルという梅川の存在は佐藤にとって大きい。
「毎日同じようなメニューで練習しているので、戦ってます(笑)。楽しんで張り合ってくれるのが梅川選手。やっぱり彼女の存在は大きいし、1日でも早く自分の方が結果を出したいとか、いいタイムを出したいという気持ちはすごく大きくて刺激になります。その刺激が、練習へのモチベーションの高さや、練習の質がよくなっている要因の一つになっています。やっぱり身近にいるライバルと張り合えるのは楽しいし、やりがいがありますよね。今は世界選手権の金メダルと、オリンピック出場で先を越されないようにしないとって頑張ってます(笑)」
日本代表デビュー1年目は「全然ダメだなー」と反省することも多かった。ただ、それらは決して絶望や壁といった暗い気持ちからくるものではない。何がダメだったかじゃなくて、こうすれば良くなると考える。そんなポジティブな思考は彼女の武器だ。
「信じて練習を続けてきたからこそ今がある」「もっと経験や練習を積めば大丈夫」
大会のレースは1度きりだ。次のレースにどう活かすべきかと切り替えなければ無駄になると考えているだけに、「ひきずっている自分が悔しいから、いかに見返そうかということを常に意識しています」。
この環境が「当たり前じゃないんだ」と再確認

日本代表として「結果を残したい」とより強く思うようになったのは、2021年末に参戦したトラックチャンピオンズリーグでの経験が大きい。佐藤にとってはここが1つのターニングポイントとなった。
「レースの経験を積むことはもちろん、今ある環境のありがたみを深く知ることができたことが大きかったですね。自分の力のなさを痛感したり、自分たちだけで行動しなければいけないことの大変さ、いつもの大会では味わえないような経験ができたことは財産になっています。たとえば、今、こうして当たり前のようにバンクで練習ができているけれど、チャンピオンズリーグのときは自分たちで練習場のアポイントメントをとって、スケジュールを調整して使用料の支払いをしたりもして。室内のベロドロームが使用できないときは外のバンクでの練習になるのですが、雨の日でもそこでやらなければいけない。もちろん、自転車の整備は自分たちでやるし、食事も自分たちで買い物に行き、自炊。飛行機のチケット確保や預ける荷物の規定を調べたり、日本では気にしなくてもいいことをすべて自分たちでやって。しかも、コミュニケーションはすべて英語、またはスペイン語だったので、言葉の面でもいつも通りとはいかず苦労しました」
帰国後、日本で拠点としている伊豆のベロドロームに戻り、100%の状態でできる環境で練習したときは、これが「当たり前じゃないんだ」と再確認したという。参戦したチャンピオンズリーグで「歯が立たなかった」という結果も相まって、「もっと強くならないといけない」という意識が芽生えた。様々なレース展開を想定し、「この場合はこうすればいいんだ」と可能性を探りながら、練習に臨めるようになった。
そんな佐藤が喉から手が出るほど欲しかったのが国際大会のタイトルだ。
「どんな展開でも勝てる」という自信

今年2月にインドネシア・ジャカルタで行なわれた自転車トラック種目のパリオリンピック出場枠をかけた選考レースの初戦、トラックネーションズカップ第1戦の女子ケイリン決勝。先頭でスタートした佐藤はマチルド・グロの仕掛けにのって、番手を確保。最終周でふたたび先頭に立ち優勝を果たした。
「ようやく大きな舞台でタイトルを獲れたといううれしさはやっぱりありますね。準決勝は狙いを定めて考えた結果の動きができましたし、決勝では準決勝の経験を活かすこともできた。スプリントのチャンピオン(グロ)のトップスピードにも負けることなくくらいつき、脚を残して勝てたことはすごく自信になりました。どんな展開でも勝てるなって」
一方で悔しさものぞかせる。
ジャカルタの大会では一昨年と昨年の世界選手権覇者フリードリッヒが女子ケイリンを欠場。“再戦”を熱望していた佐藤にとって、彼女を倒したうえでのタイトル獲得ではなかったことが心残りだ。
「彼女がこのレースにはいなかったので、絶対に勝たなければいけないという気持ちで臨んでいました。そういう意味でいえば、狙ってタイトルを手に入れられたことは良かったと思います。でも、やっぱりフリードリッヒと戦いたかったですね。それに世界選手権の銀メダルの悔しさは、やっぱりあの舞台でしか払拭できないという思いもある。でもすぐに次の大会も控えているのでそこでしっかりとメダルを獲れるように切り替えないと。2024年までは気を休める暇なんて1ミリもないので」

8月の世界選手権「リベンジの金を獲ります!!」
スピード感に溢れ、極限状態の緊張と集中のなかで戦う自転車競技に魅了され続ける彼女は、約1年半後に迫るパリオリンピックを見据える。自転車競技、そしてガールズケイリン、どのレースにも同じ価値があると考えているが、4年に1度の大舞台はやはり彼女にとっても特別な舞台だ。
「出場権を獲得するためのポイント争いもあるので過程も重要だと思っています。もちろん、オリンピックに出るだけではなくて、そこでしっかりと結果を残すことが大切」
今年最大の目標の一つ、8月にイギリスで行なわれる世界選手権では「リベンジの金を獲ります!!」と力強く宣言する。バンクでは力強い走りで存在感を見せるエース。飾らず、気さくなトークで周囲を和ませる佐藤だが、明るいキャラクターの中にも確固たる強い意志をのぞかせる。
目標に向かう彼女に迷いはない。その視線はまっすぐ前だけを見つめている。
佐藤 水菜Mina Sato
1998年12月7日、神奈川県生まれ。自転車競技をしていた父親の影響で自転車に乗り始める。2017年に競輪学校第114期生に合格。2021世界選手権女子ケイリンでの銀メダルを皮切りに、競技の世界でも表彰台の常連へ成長。2022年にはアジア選手権とジャパントラックカップで金メダル、2年連続の世界選手権銀メダルを獲得した。一方でガールズケイリンでも強さを発揮し、2022年のガールズケイリン特別レース優勝は3つ。
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