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レース開催中の宿舎は“スマホなし”で何をしているのか

ガールズケイリンの人気筆頭格として、1つの時代を牽引してきた高木真備さん。昨年末、デビュー当時から目標に掲げていた「ガールズグランプリ優勝」を見事に達成。年間賞金女王の称号を獲得し、「やり切った!」という気持ちで今年5月に選手を引退しました。現在は保護犬・保護猫活動を行なっています。
そんな高木真備さんに元ガールズケイリン選手としての、さまざまな裏話を聞いていく当連載企画。1回目はガールズケイリン選手のメイク事情、2回目は職業病について、そして3回目となる今回は「レース開催中の生活」の話を聞きました。
競輪選手は前日検査日も含めると、4日間もの間、外部との連絡が一切取れない宿舎に滞在します。スマートフォンはもちろん、通信機器のあるゲーム機、音楽機器など、持ち込めないものは多いようです。一般の人からすると「スマホなしの生活は想像できない」という人も多いでしょう。果たして、レース開催中のガールズケイリン選手は、どういった4日間を過ごしているのでしょうか。
ミッドナイト開催は自由時間長め
まずはレース開催中の「自由時間」についての話を聞きました。もちろんレースの時間は決まっていますが、それ以外に何かやるべきことはあるのでしょうか。
「基本的にレース以外は自由時間です。競輪場やレース開催時間によっても変わるんですけど、例えば普通の昼開催なら8時半くらいから『指定練習』という、20分だけバンクで練習できる時間があります。ミッドナイト開催の場合は指定練習が2回ありますが、それも参加は自由なので、基本的にはずっと自由時間ですね。
指定練習の他にも、朝食の時間だったり、お風呂の時間だったりと、決められた時間のなかで動かないといけないスケジュールはありますが、レース以外は絶対に行かなくてはいけないわけではないです。だからミッドナイトで決勝の場合は、発走が23時を超えることもあるので、特に自由時間が長いですね」
競輪選手はリサイクルショップ行きがち?
それだけ自由時間が長く、しかもバンクでの練習時間が限られているとなると、どうしても時間潰しのアイテムが必要になります。しかしスマホやパソコンなどの通信機器は完全に持ち込みNG。他にも意外な持ち込みNGのアイテムがあるようです。
「外部と通信できる可能性があるものは全てNGで、意外と困るのはイヤホンですね。私は音楽が入れられるメモリータイプのウォークマンを使っていました。プールの中でも使える防水タイプの優れものだったのですが、あるとき壊れそうになってしまって……。でも、まったく同じものは生産終了で売ってないですし、同じメーカーの新しいものは全てBluetoothが付いているのでレース開催中は持ち込めないんです。だからボンドで止めて引退するまで使い続けました(笑)。

ゲームをやる選手も同じかもしれませんが、『競輪選手は意外とリサイクルショップに行っている』というのはあるあるかもしれません」
スマホのない自由時間”は何をしている
ミッドナイト開催の場合は、辺りが暗くなるまで“スマホのない自由時間”が続く競輪選手。食事やお風呂などの生活の時間を除き、具体的にどういったことをして過ごしているのでしょうか。
「もちろん人それぞれなのですが、DVDプレーヤーを持ち込んで映画を見たり、漫画や本を読んでいる人が多いです。ガールズの選手同士では、オシャレな選手が後輩にメイクやネイルを教えていたこともありました。韓国好きな選手が『この化粧品いいよー』と、オススメの化粧品を持ってきてくれるんです。それはガールズならではですよね。
それと、アイドルの写真を持ち込んで、自分の寝るスペースの壁に貼っている選手もいました。だから暇潰しというだけでなく、テンションを上げるためのアイテムを持ち込む選手も多かったですね」
スマホがないことによる弊害は?

スマホがない生活が月に10日前後あったことに対しては「競輪学校時代は1年間使えなかったですし、普通に慣れましたよ」と語る高木さん。ただ、多少なりともスマホがないことによる影響はあったようです。
「暇つぶしアイテムとしてクロスワードを持ってきている選手がいたんですけど、クイズがどうしてもわからない場合、ガールズ選手全員に回ってきていました(笑)。『この問題わかる人いない?』みたいな感じで。そういうクイズって、スマホで調べればだいたい答えがわかりますよね。でも調べるものが一切ない状況で、すぐに答えを知りたいときは知っている人に聞くしかなくて。スマホの生活に慣れすぎて見失っていた『スマホの便利さ』に、気付かされる瞬間がたまにありました(笑)」
4日ぶりにスマホを見た時のあるある
そして3日目のレース終了後、選手たちは4日ぶりにスマホに触れる。毎日何時間と触れているスマホを4日間も預け、久々に触ったときの選手たちの様子を聞いて見ました。
「例えばミッドナイト開催のときは、その日に帰れない選手が宿舎に泊まります。そういったときは、最終日の最終レースが終わった後に『今から通信機器を使用してOKです』といった内容の放送が流れます。
それまではガールズ選手同士で『明日何食べる〜?』みたいな話でキャッキャ盛り上がっていたのに、スマホが解禁となると、急にみんな『シーン』となるんです(笑)。これはもう面白いくらいに静かになります。もちろん私も黙ってスマホをいじっている1人ですが……笑」
現代社会を生きるうえで、なくてはならないアイテムのひとつと言える携帯電話。それを預けなくてはならない仕事というのも、なかなか珍しい職種と言えるでしょう。おそらく一般の人からすると、スマホが4日間も取り上げられたら不安で仕方がないのではないでしょうか。競輪選手は体力的に過酷なトレーニングをしているだけでなく、月に約10日間もスマホがない生活をしているという意味では、一般の人よりも精神的に強い人が多いかもしれません。
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